フランスは日本の絹産業の恩人

2020-04-29

ルイ王朝と絹産業

絹の製法が東ヨーロッパ(トルコ)に伝わったのは6

世紀といわれています。ローマ時代から中央アジアやヨ

ーロッパの貴族達は何とかしてシルクの製法を入手いた

いものと色々な策を廻らしていましたが、中国の歴代王

朝は蚕の卵の持ち出しや、その製法を黄の時代から3千

年のながきに渡って秘密にして来たのでした。

それは黄河周辺の漢族が絹の製法を確立して、絹をもっ

て西方から各種種子、鉄、馬などと交易し、兵にも絹の

フエルトを着せ、強大な国を作る礎になって来たからで

す。13世紀になってフランスのルイ王朝が強大になって

来ると自国で絹を作り、貴族達にふさわしい衣装を作ろ

うとリヨンに各地から、染織、織物の職人(ギルド)達

を集め、中国に勝る絹織物文化を作り上げて行くのです。

ヨーロッパに微粒子病が発生

繁栄を極めたフランスの絹産業は1850年〜60年にか

けてフランスを中心にヨーロッパ全土に、蚕の幼虫期(

2〜3齢期)に小胞子虫が蚕に寄生し、蚕が死んでしま

う微粒子病が大発生し、ヨーロッパの絹産業が壊滅的ダ

メージを受けてしまいました。

そこで新たな蚕種製造が渋沢栄一らによって確立された

日本から、病気に冒されていない蚕の卵を大量に輸入し

ましたが微粒子病は終息せず、日本の蚕種業を潤しまし

たが,最新動力製糸工場なども稼働出来なくなってしま

いました。

その様子を幕末に幕府会計方としてパリ万博に派遣され

た渋沢栄一はつぶさに見聞し、人脈も作って来ました。

パスツール、微粒子病発見

フランスのワクチンなどの医療法を開発した細菌学者

ルイ・パスツール(18221895)が微粒子病を発見しま

したがフランスの養蚕業は再興せず、アヘン戦争で混乱

し、イギリスに支配された中国から輸入する事も出来ず、

絹生産の勢いが高まる日本が注目される事になり、フラ

ンスは自国生産をあきらめ、後進国を指導して、安定的

に輸入する政策に転換して行くのです。

富岡製糸所とパリ万博

1867年のパリ万博には幕府と薩摩藩、佐賀藩などが参

加し、「四季花鳥の図」等の絹織物や日本の着物姿の女性

の茶の湯接待などがジャポニズムブームを巻き起こしま

した。参加していた渋沢栄一はフランスの製糸工場など

も見学していましたが、1868年大政奉還の報を聞くと急

遽帰朝し、政府高官となってフランスの最新製糸工場の

誘致を画策し、伊藤博文の命により明治5年にフランス

の製糸技術者ブリューナを招聘して富岡製糸場を開設し、

日本の近代絹産業の礎を築きました。

フランスへ留学生派遣

富岡製糸場を通して日仏の需要供給の流れは結ばれ、

富岡で生産された絹糸はフランスのリヨンに運ばれて行

き、市井の農家の絹糸はアメリカ等に輸出されました。

日本ではより付加価値の高い絹織物を作るため、1872

に京都の西陣を中心に、養蚕、紡績、図案、染色、織物

など各人目的を持って第1陣を、翌年第2陣、1877年に

は第3陣の留学生を派遣し、フランスも彼等を暖かく迎

い入れ、惜しみなくその技術を教えてくれたようです。

この成果が日本の絹の世界的評価に繋がってゆくのです。

この留学生達が中心となって開かれた絹の専門学校が今

日の京都工芸繊維大学、東京農工大学、信州大学、群馬

大学です。

農商務省原蚕種製造所(後の蚕業試験場)設立

江戸時代までは絹の輸入国であった日本は、明治にな

って飛躍的発展を遂げ、主たる輸出品に成長しつつあり

ましたが、各地の蚕種がバラバラで糸質もフランスやイ

タリア、中国にも及ばないものでした。

そこで政府は全国の蚕種、元蚕種の改良統一を図るため、

1911年(明治44年)に農務省原蚕種製造所(後の蚕糸

試験場)を東京、京都、群馬、福島に開き、主に蚕種の

製造と品種の改良行ない、その結果良質な日本の生糸が

生産され始めました。その後この試験場は沖縄まで全国

各地設置され、この年蚕糸業法も制定して、繭の糸以外

の加工を禁じて、日本は絹糸生産に邁進しました。

つかぬ間の繭生産世界一

こうした官民挙げての努力で、1928年(昭和3年)に

は全国221万戸の農家で約40t強の繭生産を果たし、

世界一の繭生産国になり、絹が当時の日本の輸出総額の

40%強となりました。

ところが、この利益で軍備が拡張され、絹の師匠である

中国に侵攻し、顧客である欧米列強と戦う第二次世界大

戦に突き進んで行ったのです。

戦中、桑田は荒廃し,戦後繭生産は復興の兆しを見せま

したが、新たな化学繊維の登場で、今日では100 t位と

なり、大量輸入国となってしまいました。

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