絹の来た道 これからの道(その5)

2020-04-25

絹の多角利用

絹は今日まで数千年に渡り高級な繊維として利用され

て来ました。ところが30年ほど前東京農工大学の平林教

授により、食べるシルクが発表されると、にわかにその

方面の研究が各研究機関で盛んになって来ました。

時を同じくする様に昆虫機能や蚕の遺伝子組み換研究が

脚光を浴びて来ました。

食べるシルク

その様な時代、絹織物の盛んな滋賀県長浜では屑糸等

の有効利用を模索していました。京都の加悦町では第3

セクターを立ち上げ、加水分解したシルクパウダの発売

を始めました。それはシルクを食べると体脂肪減、高血

糖値抑制、痴呆症予防等が期待されると云う夢の様な効

果を期待するものでした。その後酵素分解法などが開発

されましたが、シルクパウダの分子の連鎖の大小で上記

の効果が著しく異なる事が判明して、塩化カルシューム

溶解法などが開発され、メタボ対策用、高血糖値抑制用

など用途に応じたシルクパウダが作られる様になってき

ました。昨今では機能性食品として高血糖値抑制のため

の美味なサプリメント等が販売されています。

また宇宙飛行士用食品開発にも注目されています。

私は「ヤセヤセ缶ジュース」の様な手軽なシル入り食品

が一般化して来る事を期待しています。

無菌培養養蚕

蚕の人工飼料が開発され、年間何度でも工場で繭生産

出来る事業が、蚕新産業の要請を受け、軌道に乗って来

ました。飼料が高価なのでさらなる努力が必要です。

医療品開発

蚕は家畜化された18種類の必須アミノ酸を作る昆虫

で、生命のサイクルが30日弱と短いので、試薬実験動

物に多用されるようになりました。無菌培養された蚕か

らインターフェロン等が作られています。また無菌培養

シルクを使った化粧品は年々愛好者が増えています。

今やシルクは簡単にパウダやゲル、高野豆腐の様な固

形物にして保存し、何時でも目的に応じて利用出来ます。

シルクは医療素材に使用しても拒否反応がありません(

シルクアレルギーは稀に存在)。古くは手術の抜かない縫

合糸からはじまって、今日では骨や皮膚、血管まで作ら

れる様になり、法整備が進みコストが安くなれば、絹は

親和性が高いので長期リハビリの要らない医療資材が現

実の物になろうとしています。

蜂の巣もシルクですが、糸は採れませんのでゲル状の

爪ケアー用品が売り出されました。2020のオリンピック

に日本のバレーボール選手が使用する事になりました。

工業製品の開発

シルクはプラスチックやビニールシートの様にもなり

ます。脱プラスチック時代を受けて防腐効果の高い皿や

ストローが使用後には健康維持食材としても利用できる

様になるでしょう。野菜などにシルクを被せておくとし

おれが遅くなります。その様な事から鮮度維持容器など

にも利用される日が来るでしょう。

また内装材としても有効です。シルクの壁は人の気持

を和やかにしてくれます。昔から貴賓室などにシルクを

壁に使用するのはその為です。火災の時も強力な耐熱効

果を発揮し延焼を遅らせ、有毒ガスの発生も有りません。

蜘蛛の糸もシルクです。細くて、軽く張力ではシルク

よりはるかに優れています。大腸菌に作らせた蜘蛛の糸

製造が日本で成功し、世界の注目を浴びています。

紫外線が当たると数時間ではあるが強度を増し、刺激を

受けると強く収縮する(捕獲糸)繊維は他に例が有りま

せん。今後の研究が待たれます。

貝絹とは貝の紐や貝が岩にくっ付く成分です。この生

態研究で水中接着剤が開発されましたが、まだまだ沢山

の機能性が隠されていると思われます。

遺伝子組み換え蚕

遺伝子組み換え技術が急速な進歩を遂げ、蛍や珊瑚の

遺伝子を持った蚕が青白く光る糸やオレンジ色に光る糸

を作る事に成功し、一般飼育が始っていますが、カルタ

ヘナ法で蚕の糞や残食の処理が厳しく規制されていて、

確たる処理方法が確立していないので、今後の発展が危

惧されています。

昆虫機能開発

蚕の脱皮ホルモンやヨウジャクホルモンの調整でニ

ワトリの卵大の繭も、スズメの卵くらいの小さな繭も自

在に作る事も出来るようになりました。

ヤモリはなぜガラス板を垂直に登れるか。蝉の羽はど

うして汚れないか、なぜ玉虫の羽根の色は退色しないの

か、アブラムシの匂いセンサー等の研究に専念して未来

産業につなげようとしている研究者が増えています。

ヤママユガ科の繭の多孔質繊維の数々の未解明機能性

の研究は急務です。

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