絹の二重織ストールで重ねの色を染める

2019-11-07

野蚕、家蚕生糸の光沢の差を利用

野蚕と家蚕の生糸(紡、紬糸ではありません)はそれ

ぞれ光沢が異なります。

一般に野蚕糸は草木で染まらないと言われますが、家蚕

の生糸と比べると、ややうすく光沢のある品の良い色に

染まります。

野蚕と家蚕絹の薄地を重ね袋織りにすると、片面は野蚕、

もう片面は家蚕の二重織が出来ます。

この素材を草木(茜、藍、ログウッド等)で染めると家

蚕絹はしっかり濃く染まり、野蚕絹は少しうすく染まり

ます。うすく見えるのは、糸の形がおにぎり型をした家

蚕絹より野蚕絹(ヤママユガ科)の糸は扁平型なので光

が乱反射され、吸収された一部の光が家蚕には見られな

い多孔質構造により、さらに複雑に乱反射され、吸収さ

れた時と違った、やや紫色波長の光となって糸の外に放

出されるので、人の目には染まりが悪いと見えるのです。

この濃淡別々、二枚重なった色艶は不思議な色彩の世界

に人を魅惑します。

この微妙な色の変化、見る角度による彩度の違いに誰も

が驚かされます。風に揺れれば違って見えるのです。

構造色

色には染織色と染めないでナノ構造の物質の幾重にも

重なって発色する玉虫の羽根の様な構造色があります。

染織色は時間とともに退色してゆきますが、構造色の退

色はありません。永遠の艶なのです。

勿論、絹はナノ構造物質に比べればはるかに大きな物質

ですが、繊度の細い絹織物を二枚合わせる事は、野蚕と

家蚕の糸を1枚に織ってもその効果は見られませんので、

ほんの少し玉虫の羽根に近づいていないでしょうか?

薄絹を着る

今も昔も女性は薄いものが好きなようです。

古来中国の高貴な女性は厚手の錦織の上に蝉の羽の様に

薄い絹を着る事が『綺麗』だったのです。

(綺:上質な薄手の絹織物—-無地や先染めの文様織り、

麗:鹿の群れ—-奈良の都に多くの鹿を遊ばせた所以?)

平安の昔は生地に柄をうまく定着させた染織が出来な

かったようで、色の表現を重ねの色で表現しました。白

に白を重ね「雪重ね」ピンクにピンクを重ね「桜重ね」

といって、その濃淡で着る人の趣味教養を競ったと云わ

れています。まさに十二単はそのための重ねなのです。

今日でもスカートやパンツの上に寒い季節でも薄い無

地のチュールの様な素材を着ている人を見かけますが、

いずれも合わせる素材がミスマッチですので、綺麗には

及ばないどころか、何か気の毒のようにも、また悲しく

も見えるのは私だけでしょうか?

二重織草木染めストールの販売

草木で染めた無地の家蚕とタサール蚕の生糸の二重織

のストールは女性の最も好む柔らかく出来ているにもか

かわらず、シンプル過ぎて人目を引かないのか、以外に

売れません。

ときとして目にとめ、「こんな色艶の物に出会えて幸せ」

と、狂喜して求めて下さる人がいる反面、勧めてもあま

り反応しない人も多くいます。

このデリケートな作品は、主たる光源が光の波長の短い

LED電球のもとでは美しさを増しません。

ですから、最近の百貨店ではLED光源では絹が売れに

くいように、このストールも精彩を放ってくれません。

売場にハロゲン球の様な太陽光に近い光を入れると、一

気に花が咲きます。デパートの繊維商品の殆どは化学繊

維で、化学繊維はLED光源で美しく見えるので、絹の

為に光源を換えようとはしません。

色艶は人それぞれに見えている

光の波長は夕日の赤さや薪能の光の揺らめきを引き合

いに出すまでもなく、人の感性を大きく左右します。

しかし人の目の色彩を識別する錐体は人それぞれに細

分化された進化をしているようで、現代のホモサピエン

スは夜行性哺乳類の時代の2錐体(白、黒識別)から3

錐体(多色識別)に進化し、それからさらに進化して4

錐体に近づいている人も若干いるようです。

この3錐体を超えた人達の目にはこよなく美しく見える

のではないかと思われます。

色の好みの判断は人の目の進化と光の波長や時代の道

徳律(日本では侘び寂びが美意識の中に取り入れられて

より大きく色彩の好みが変わりました。草木染めの基本

はなんとかして原色を染めようとして来た歴史です)に

左右されて、人それぞれ、十人十色とは良く言ったもの

です。

一覧を見る

Copyright(c) 2012 akasaka be-in Co.,ltd. All Rights Reserved.